2-1で時間管理のリストを作ってみると、自分以外の他のプロジェクトにいかに多くの時間を費やしているかに気づきます。社長の仕事の中にも、無駄な仕事、本来は社長がやるべきではない仕事、社長の時給に見合わない仕事がたくさんあります。もしも、そうした仕事を社長がいつまでもやっているとしたら、会社の成長にとってはかなりマイナスです。できるだけ早く誰かにバトンタッチ(委任)して、社長本来の仕事に集中できるようにしましょう。


この場合にバトンタッチする委任先としては、社員だけでなく、外注先やIT化も検討して、組み合わせて考える必要があります。例えば、決裁の必要な書類は電子化してクラウド上で電子署名で管理するようにして、社員→係長→課長で決裁する書類、部長で決裁する書類、取締役で決裁する書類、社長が決裁する書類と最終チェック者を分けます。


社長が決裁する以外の決裁書類については、重要度によって1週間単位や1カ月単位で決まった日時に結果報告だけを受けるようにすれば、社長がしっかりと目を通さなければならない書類が大幅に減ります。仮に英語が得意な社長だからといって、自分で翻訳していては社長の時給に見合いません。社員に依頼するか、一部を外注化すれば、実質的なコストを減らすことになります。このように、委任先を組み合わせることで、社長の委任の効果をより高めることができます。


まずは、誰に、どのように、いつまでに委任するのかを決めましょう。次に、その仕事を委任するためには何が必要かを検討します。仕事を丸投げするのではなく、何のために委任するのか、委任後はどのようにチェックして評価するのか、教育やマニュアルが必要か、完全に委任するまでに必要な項目をリストアップします。そのうえで、マニュアル作成の優先順位、難易度や重要度も考えながら作成のスケジュールを決めます。


社長に限らず、ある特定の人にしかできない仕事が多い、一部の社員に業務が偏っている会社というのは、各自の仕事の目的が不明確で、時間管理ができていない、社員教育体制が整っていないからです。教える手間やコストを惜しんでいては、いつまでも会社は同じ状況のままです。


委任できる仕事は権限を委譲し、毎日、または毎週のスケジュールの一部を固定化し、自分の仕事に専念してください。固定化した自分の時間には、他の仕事を入れません。自らの仕事に集中してください。 


やるべきタスク 

  1. 仕事を誰にどのようにいつまでに委任するかを決める。
  2. 委任のために必要なマニュアルをリストアップする。  
  3. マニュアル作成優先度を決める。
  4. マニュアル作成スケジュールを決める。
  5. 委任する仕事のKPI・報告体制・スケジュールを決める。
  6. 委任と外注化を実施する。


あなたは自分の時間を自分できちんとコントロールできていますか? 他人の都合に合わせて、あるいは自分の個人的な都合で、予定やアポイントを変更してばかりいませんか?


会社には社長にしかできない重要な仕事があります。それなのに、社長が社員や外部の人の都合に合わせて予定を変更したり、社員と同じ仕事ばかりをしていては、会社の方向性がブレたり、成長が鈍化してしまうかもしれません。社長のデフォルト(標準)スケジュールを作成することは、会社の時間を効率化するための第一歩です。


例えば、会社を大型客船に例えると、社長は船長です。船長の一番の仕事は、天候や航路に問題がないかを確認しながら操縦士や機関士に適切な指示を出して船全体のスタッフを指揮し、安全で安定した航海を維持することです。そのために、船の進路を司るブリッジ(操舵室)にいる時間が多くなります。もしも船長が、ブリッジではなくて船内の客室や食堂、娯楽室にこもってばかりいたら、進路を間違えて船は座礁してしまうかもしれません。


そうならないために、会社の進むべき方向や会社の目標を考える時間を決めましょう。「そのうち、仕事に余裕ができたらやろう」と思っていると、いつまでたっても実行できません。


今の会社の問題点を考えて、自分にしかできない役割は何かをリストアップする。自分が今やるべき作業は何かを選別する。そのために、1人で考える自分(会社)のための時間を毎週のデフォルトとして設定しましょう。


また、自分や会社の生産性をより上げるために、どの仕事をどの曜日のどの時間帯に行うのが良いかを考えましょう。例えば、会議やミーティング、アポイントは行動しやすい週の初め、頭の働きの良い午前中にすませ、午後は目の前の仕事に集中させる。普段接点のない社員とランチライムにコミュニケーションを図るなどなど……。


顧客のクレーム処理、請求書の発行、稟議書の決裁など目の前にあるすぐにやらなければならないワークイン(進行中の仕事)と、社員教育や設備投資など会社の将来のことを考えるワークオン(将来のための仕事)のバランスをとることが大切です。デフォルトスケジュールを作る中で、このバランスを明確にします。


実は、売上の上がっていない社長ほど、ワークインの割合が多くなる傾向があります。仮に9割をワークインに費やしているなら、3カ月後にこれを8割にするように目標を立て、デフォルトスケジュールを作り直しましょう。 


やるべきタスク 

  1. 1週間の主な活動と時間比率を列挙する。  
  2. デフォルトスケジュールの草案を作成する。  
  3. 社員に自分のデフォルトスケジュールを公開する。 
  4. デフォルトスケジュールの中に社員対応時間を設定する。 
  5. 自分だけのワークオンの時間は邪魔されないようにする。 


経営者にとって、最も大切なリソース(資源)は何ですか? と尋ねた場合の一般的な答えは「お金」です。その他にも、「従業員」「家族」「健康」「自分」といった答えが返ってくることもあります。 


もちろん、これらはどれも重要ですが、実は経営者にとってとても大切なリソースなのに、あまりにも当たり前過ぎて忘れられがちなものがあります。それが、会社の時間(自分や社員の時間)です。 


過ぎ去った時間を再び取り戻すことはできません。毎日、多くの人と会い、多くの判断や決断をしなければならない経営者にとって、自分や社員の時間を最大限に有効活用することは、何よりも重要です。あなたは経営者の時給に見合う時間の使い方、時間管理をしていますか? 自分や社員の時間を無駄なく有効に活用していますか? 


ちなみに、平均的な中小企業の経営者の年収は1000万円~1200万円だといわれていますから、仮に年間2000時間働くとして、その時給は社会保険や健康保険の費用なども加味すると、7500円~8000円になります。これは一般的な社員の時給の4~5倍です。つまり、今のあなたの仕事を社員や外部に任せることができれば、会社の無駄なコストを大幅に減らすことができるわけです。 


もしも、社員や外部に任せられない、あなたにしかできない仕事がたくさんあるとしたら、その会社はあなたというリソース以上には伸びない会社ということになってしまいます。 


こうした部下に委任できない会社の経営者は、自分がやるべきことに優先順位がつけられていません。まずは自分の毎日の時間を測定してみましょう。1日、1週間、1カ月間単位で自分の時間を分析し、有効な時間と無駄な時間に色分けし、自分がやるべき仕事に優先順位をつけます。これによって、仕事の重要性やインパクトを直接、視覚化できます。 


必要なら、社員それぞれの仕事も測定し、あなたの仕事の優先度と緊急度と合わせて並べ替えてみます。長期の計画、大きな仕事がある場合は、それに取り組む社員ごとに週単位、1日単位の小さな時間に分けていきます。 


毎日の時間はできるだけ同じように習慣づけるほうが良いですが、予期しない出来事が予定の時間を変える可能性もあるので、いざという時に誰に任せるかも考え、毎日、余裕のある時間管理を心掛けましょう。この方法によって、会社全体の時間を分析し、管理することができるようになります。 


やるべきタスク 

  1. 毎日の時間を無駄な時間、有効な時間に仕分けする。 
  2. 1週間、1カ月間測定し、無駄な時間の比率を算出する。 
  3. 仕事に優先順位を付ける。 
  4. 無駄な時間を無くす計画を立てる。 
  5. 必要性の低い仕事は部下や外部に委任する方法を考える。 


既存顧客に新しい商品に買い換えてもらう。たとえ顧客がすでにあなたの商品持っている場合であっても、新たな商品を買いやすくさせるワザが、イージー・ツー・バイ(easy to buy) 、下取りです。


例えば、「どんなパソコンでもお引き取りいたします。下取りに出されたお客様には、3000 円分の割引券を差し上げます!」というキャンペーンを行ったとします。新しいパソコンが欲しかった顧客は「古いパソコンを自分で処分するのには手間もお金もかかる。それなら、下取りのあるこのお店で買おう!」という気になります。


環境問題が深刻に語られる今だからこそ、「タンスの中で眠っている古着やバッグ、使わなくなった家具や電化製品をリサイクルしませんか?」「弊社でご購入された商品のパッケージ、ご不要になった段ボールは、無料でお引き取りします」という地球環境にやさしい店というイメージを与えるのも効果的です。


顧客があなたの商品を買った時に、「弊社でお買い求めの商品は、下取り、あるいは何年後であっても無料で引き取ります」といって最初に「下取りで5%割引券」「無料引き取りで500 円割引券」などを差し上げるというのも、同じ店で買い続ける動機になります。


新規顧客と既存顧客の両方にアプローチしやすくなるワザが、○周年記念、感謝祭、スプリングセールなど特別なイベントの開催やイベント関連商品の販売です。


「日頃のご愛顧に感謝して特別なイベントを開催します」「おかげ様で、創業○周年を迎えることができました。お客様への感謝へのお返しとして、お得なスペシャルバージョンを500個限定で販売します!」などと呼びかけることで顧客の来店機会を増やすと同時に、ちょっとした工夫で新たな需要を引き出すことにもなります。


例えば、ハロウィンやクリスマス、バレンタインデーのセールに合わせて、お店で記念イベントを開催してみませんか? また、既存の商品に少し手を加えた特別パッケージ、特別デザインの商品を作ることで「いつもの商品とは違うバージョンも欲しい」という顧客の新たな購買意欲を引き出すことができます。


しかも、あなたのアイデア次第でいくらでも作ることができます。「いつもありがとうパッケージ」「大好きな友人と一緒にご参加いただくフレンドパーティ」など、感謝イベントをきっかけに、既存顧客に新規顧客となってくれそうな友人を紹介してもらのも効果的です。


「打ち合わせで個室を借りたいんですが?」「すみません。その日はすべての個室に予約が入っていて、空きがありません…」 これでは、せっかくの売上の機会を失うことになります。

それよりも「その日時、うちの店は空いていませんが、提携している近くのお店を数店ご紹介できます」「うちのお店からの紹介だと、それぞれの店によって5~10%の割引もありますよ」と答えて、「ではご紹介をお願いします」ということになれば、問い合わせをしてきた顧客にも、提携先のお店にも喜んでもらえたうえに、提携先のお店から10~20%の紹介手数料(売上)を受け取ることができます。あるいは提携先から紹介を受けることもあります。


このように、他社の商品やサービスを活用することで自社の売上を伸ばすのが事業提携です。
ポイントは、競争相手、コンペティター(Competitor)となる相手を、自社の足りない部分を埋めてくれる協力者、コーポレーター(Cooperator)、事業提携先にすることにあります。

単に自社の顧客を紹介して手数料を受け取るような一方通行な事業提携に比べ、お互いの顧客や商品、サービスを紹介し合える双方向の戦略パートナーを増やせればなお良いですね。

顧客に定期的に連絡をする場合でも、誰がいつ、どのぐらいの頻度で連絡をするかを事前にきちんと社内で設計しておかないと、定期連絡の効果が低くなってしまう場合があります。

例えば、あまり頻繁にメルマガを送ると、登録を解除されるかもしれません。また、複数のスタッフが何度も連絡をしていると、かえってうるさがられてしまうかもしれません。仕事のメールがたまっている月曜日の朝は、メールを読んでもらえない可能性も高いでしょう。月に1回、隔週1回、金曜日の夕方、夜、土曜日の午前中、午後、夕方など、いくつかのパターンを試 して、反応がいい日時を決めます。

「あのお客様はどうしているかな?」「今月は売上が伸びていないから連絡をしてみよう」といった連絡ではなく、誰が担当するのか、どういう連絡方法で、どういうタイミング、曜日や時間帯が効果的なのかを検討し、一覧表にしてスタッフの共通業務としてスケジュール化しましょう。

「メルマガあるいダイレクトメールのクーポン券で5%引き」「電話を受けられてご来店いただいたお客様だけのプレゼント」などで、その効果についても測定し、顧客連絡予定表を定期的に見直しましょう。

お店にお目あての商品を買いに来られた顧客に、「実はこういう商品もありますよ」「この商品に興味を持たれているお客様には、こちらの商品もおすすめですよ」と、別な商品や関連グッズに気づいていただきながら、より多くの自社商品をアピールし、顧客の購入意欲をかきたてる、それが顧客のための購入チェックリストです。

例えば、Aというパソコンを買いに来られた顧客には、ついでに購入していただけるように関連したおすすめのソフト、メモリー、キーボード、バッテリー、パソコンケースなどが一覧になったチェックリストをお渡しします。Aの購入者に、なぜそのソフトやメモリーがおすすめなのか、リストに明記しておきます。

また、きちんと説明できるように営業スクリプトを作成し、営業スタッフに指導しましょう。「ポテトもご一緒にいかがですか?」「その料理に良く合うワインはいかがでしょう?」というのも営業スクリプトの良い実践例ですが、顧客自身が自然に気づくように、店内ポスターやメニュー表、レシート、次回サービス券などで他のおすすめ商品をお知らせするのも1つの方法です。あるいは、自社の購入サイトに、商品を選ぶと、次々とオプションのおすすめ商品が出て来る仕組みを作るのも効果的です。

あなたは、自社のどの商品がよく売れているのか、どの商品が売れずに長期在庫になっているのかを把握していますか?季節や時期によって、売れ行きの大きく違う商品やサービスはありませんか? 

それぞれの商品を定期的に利益率(粗利率)と販売量の2つの軸で測定することで、今売れている商品が何かを知り、会社全体で売れている商品に注力することができるようになります。一番簡単なのは、商品別の利益率×販売量=粗利を出して比較することです。売れている商品を中心にマーケティングプランを考え、より売上を増やすための営業スクリプトを作成しましょう。 

もしかしたら、売れていない商品は販売を取りやめるべきかもしれません。あるいは、売れている商品とパッケージにして早めに在庫を減らすように工夫が必要かもしれません。 

粗利の多い商品やサービスは、さらに売上を伸ばすために、もう一度、価格やコストを見直してみましょう。値上のワザと組み合わせることで、粗利を増やせるかもしれません。 


顧客は、①まだ商品を購入してはいないが問い合わせをしてきた見込み客(Prospect)、②初めて買ってくれた『買い物客』(Shopper)、③2度以上購入している『顧客』(Customer)、④メンバーシッププログラムに参加している『会員顧客』(Member)、⑤他の人にもどんどん商品を推奨してくれる『支持者』(Advocator)、⑥ずっと愛好してくれている『熱狂的ファン』(Raving Fan)の6種類に分類できます。 

「1-02 常連顧客用VIPカード」でも説明しましたが、手間のかかる新規顧客の開拓よりも、こうした今いる既存顧客の新たな需要を掘り起こすほうが費用対効果は高くなります。その既存顧客の新規需要を生み出すワザが、定期連絡です。 

上記の6つの分類ごとに顧客一覧を作成し、それぞれの顧客に合わせて対策を決めて、ハガキやメールなどで定期的に連絡をとりましょう。 

例えば、『見込み客』には、「初回割引」「初めての方だけの特典がありますよ」と案内してみましょう。『買い物客』には、「お客様にはこんな商品もおすすめですよ」「この商品を買われた方向けには、こういう商品もあります」「2回目のご購入特典があります」とすすめてみましょう。『顧客』には、「よりお徳な特典がいっぱいの会員、メンバーになりませんか?」と誘ってみましょう。 

『会員顧客』には、あなたの会社への親近感やロイヤリティがより上がる「お友だちに商品を紹介してください」「ご友人ご紹介キャンペーン」を案内しましょう。紹介が1回切りにならないように、何度も紹介してくれる会員顧客には『支持者』になっていただけるように、紹介してくれたお客様の人数や購入金額に応じてコミッションを支払うなど、きちんとお礼をします。 

こうして何度も紹介してくれる人にきちんとコミッションを払って紹介を継続してもらうことで、その顧客はさらにより多くの人を紹介してくれる『熱狂的ファン』になってくれます。こうした熱狂的ファンの方には、いつも「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。例えば、ベスト顧客としてパーティで表彰したり、熱狂的ファンの方々だけの旅行に招待したり、感謝状やプレゼントを贈るのも良いでしょう。 

このように顧客をランキングで分類して定期連絡によって需要を掘り起こすことで、新規顧客に頼らずに売上を作ることができます。 


やるべきタスク
1. 既存顧客を6つのカテゴリーに分類する。 
2. 6つのカテゴリーごとに定期連絡の対策案を検討する。
3. 6つのカテゴリーごとに定期連絡の対策案を決める。 
4. 『見込み客』が『熱狂的ファン』になる循環プログラムを作成する。 
5. 既存顧客に定期連絡を行う。 
6. 顧客への提案、割引、コミッション、プレゼントを見直す。